高校生向けの有権者教育の副教材に載っている政治家は男性だけ

概要
文部科学省が作成・公開した『私たちが拓く日本の未来』という高校生向けの有権者教育の副教材に載せられている挿絵で、政治家はすべて男性として描かれている。

高校生向けの有権者教育の副教材

2015年6月17日、公職選挙法の改正案が国会で成立 [1] し、2016年夏の参議院選挙から18歳・19歳の男女にも選挙権が与えられるようになった [2] 。この改正により、少なくない数の高校生が選挙権を得ることとなった。

このことを踏まえ、文部科学省は総務省と協力し、政治・選挙に関する高校生向けの副教材として『私たちが拓く日本の未来』という小冊子を作成し、9月29日に公開した [3] 。この副教材は、文科省のウェブサイトの「政治や選挙等に関する高校生向け副教材等について」というページからダウンロードできる。

この副教材では、政治や選挙の仕組みについて高校生にとって分かりやすく書かれており、これから有権者になろうとしている人にとって有用なものであると思われる。

しかし、1点気になったところがある。それは、この副教材の挿絵に描かれている政治家が全員男性なのだ。これはささいなことかもしれないが、日本の女性議員の数が少ないことを考えると、問題をはらむ可能性がある。

描かれたのは男性政治家のみ

この『私たちが拓く日本の未来』には、挿絵がいくつか載せられている。挿絵が載せられているのは、読者が読みやすくするためだろう。

挿絵の中で、政治家を描いたものが4つある。この4つの挿絵のすべてで政治家は男性として描かれている。

実際の挿絵を以下に引用する。

「候補者や政党の情報はこう集める!」と題されたページに書かれたイラスト。政見放送に映った政治家は男性である。
「候補者や政党の情報はこう集める!」と題されたページに書かれたイラスト [4] 。政見放送に映った政治家は男性である。
「候補者や政党の情報はこう集める!」と題されたページに書かれたイラスト。演説会で話しているのは政治家である可能性が高いが、これも男性である。
「候補者や政党の情報はこう集める!」と題されたページに書かれたイラスト [5] 。演説会で話しているのは政治家である可能性が高いが、これも男性である。
「候補者や政党の情報はこう集める!」と題されたページに書かれたイラスト。街頭演説をしている政治家は男性である。
「候補者や政党の情報はこう集める!」と題されたページに書かれたイラスト [6] 。街頭演説をしている政治家は男性である。
「議員の活動」という節に書かれたイラスト。このイラストの主役になっている国会議員は男性である。右上部分に書かれている政党の会議や国会の委員会のイラストには女性議員らしい人も描かれているが、あまり目立たない。
「議員の活動」という節に書かれたイラスト。 [7] このイラストの主役になっている国会議員は男性である。右上部分に書かれている政党の会議や国会の委員会のイラストには女性議員らしい人も描かれているが、あまり目立たない。

日本は国際的に見て女性議員が少ない [8] 。このことを問題視している人もいる。そういった中で、政治家の挿絵として男性しか載せなかったのは、非難される可能性がある。

たかが挿絵であると言えばそうなのだが、有権者教育ということを考えると、1つぐらい女性政治家をメインにした挿絵があった方がよかったかもしれない。せっかくの副教材なので、こういったことで画竜点睛を欠いたことは残念である。

追記

この節の文章は2015年12月12日に追記されたものである。

文部科学省のウェブサイトに載っている『私たちが拓く日本の未来』を2015年12月12日に確認したところ、元々は男性政治家が描かれていた政見放送の挿絵が、女性政治家を描いたものに変わっていた。

政見放送の挿絵は、上に引用したように元々は眼鏡をかけた男性政治家が描かれていた。しかし、それが以下に引用するように女性政治家の絵に変わっている。

「候補者や政党の情報はこう集める!」と題されたページに書かれたイラスト。政見放送に映った政治家が女性に変わっている。
「候補者や政党の情報はこう集める!」と題されたページに書かれたイラスト [9] 。政見放送に映った政治家が女性に変わっている。

文部科学省のウェブサイトに載っているPDFの更新日を見ると、2015年10月20日になっている。もしかしたら、この日に挿絵が差し替えられたのかもしれない。差し替えられた経緯は不明だが、やはり男性政治家ばかりではダメだと考えて変更したのかもしれない。

追記2

この節の文章は2016年1月2日に追記されたものである。

全国フェミニスト議員連盟が、「高等学校の生徒向け副教材『私たちが拓く日本の未来』発行および配布の中止ならびに改善を求める要望書」という要望書を2015年10月13日付けで、安部総理大臣、高市総務大臣、馳文部科学大臣宛に出していた。この要望書では、「イラストにある政治家のほとんどが男性である」という指摘をし、『私たちが拓く日本の未来』の発行・配布の中止、および改善を求めている。

脚注
  1. 衆議院.(n.d.). 「衆法 第189回国会 5 公職選挙法等の一部を改正する法律案議案審議経過情報http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/keika/1DBD526.htm []
  2. 日本経済新聞.(2015年6月17日).「「18歳選挙権」改正公選法が成立へ 16年夏参院選から適用http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS16H6F_X10C15A6MM0000/ []
  3. 文部科学省.(2015年9月29日).「高等学校等の生徒向け副教材「私たちが拓く日本の未来」等の公表について」(事務連絡)http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2015/10/02/1362350_6.pdf []
  4. 『私たちが拓く日本の未来』p.11 より引用 []
  5. 『私たちが拓く日本の未来』p.11 より引用 []
  6. 『私たちが拓く日本の未来』p.11 より引用 []
  7. 『私たちが拓く日本の未来』p.20 より引用 []
  8. 例えば、内閣府男女共同参画局のウェブサイトに載っている「地域別・諸外国の国会議員に占める女性の割合とクオータ制の取組」を参照のこと。 []
  9. 『私たちが拓く日本の未来』p.11 より引用 []