国会会議録に記録された「戦争法案」という言葉

概要
国会会議録で「戦争法案」と記録された事例はいくつもあり、そのほとんどが共産党の議員が安保関連の法案を批判するために用いたものである。

はじめに

朝日新聞デジタル』の2015年4月18日付の記事「自民、異例の修正要求 社民・福島氏、国会で「戦争法案」発言」によると、社民党の福島瑞穂参議院議員が「戦争法案」と述べたことに対し、自民党の理事が修正を求めたという。つまりは、自民党の理事は、国会会議録の中で「戦争法案」という言葉が残らないように要求したわけである。この記事によれば、こうした修正を求めることは異例であるという。

それでは、今まではどうだったのだろうか。「戦争法案」という言葉が国会会議録に出現したことは今までにあったのだろうか。

「戦争法案」という言葉の実際

国会会議録検索システムで調査したところ、平成に入ってから、国会会議録には「戦争法案」という言葉が29回出現している。なお、昭和の国会会議録には「戦争法案」という言葉は出現していない。

「戦争法案」という言葉のほとんどは共産党の議員によって発せられたもので、時の政府が出した安保関連の法案を批判するために用いている。自民党の大臣や議員が「戦争法案」という言葉を使っていることもあるが、これは共産党などが「戦争法案」と言っているのを引いただけである。

「戦争法案」という言葉が最もよく使われたのが、平成11年(1999年)のことである。このころ、小渕恵三内閣は、日本がアメリカと安全保障面での協力をすすめられるようにするため、いわゆるガイドライン関連法案を国会に提出していた。共産党は、このガイドライン関連法案が日本を戦争に巻き込む法案だとして反対していたのである。

また、平成13年(2001年)にも「戦争法案」という発言の記録が2件ある。これは、テロ対策特措法に反対する立場から共産党が用いたものである。

そして、平成27年(2015年)には社民党の福島瑞穂参議院議員が集団的自衛権に関する法整備に反対する目的で「戦争法案」という発言をした記録が2件ある。

以下、国会会議録で「戦争法案」と記録された事例のすべてを年代順に掲載する。

国会会議録で「戦争法案」と記録された事例
回次議員会議名号数開会日付発言者所属政党発言内容
142参議院本会議18号平成10年04月08日立木洋共産党政府が今国会への提出を目指している対米支援の新法や自衛隊法改悪、日米物品役務相互提供協定、いわゆるACSAの有事適用への改定などの法律、協定案は、戦争を放棄した憲法の平和原則を踏みにじる戦争法案、協定案であります。
145衆議院本会議8号平成11年02月19日松本善明共産党ガイドライン関連法案は、アメリカの先制攻撃にも呼応して参戦する戦争法案であり、憲法九条を根本的に否定するものであります。
145参議院予算委員会3号平成11年02月23日市田忠義共産党日本がガイドライン法案でやろうとしていることは、国際的に見て戦争行為そのものであります。まさに戦争法案です。
145衆議院本会議14号平成11年03月12日佐々木陸海共産党本法案は、日本周辺地域でアメリカが周辺事態への対応として軍事行動を起こした場合、その米軍の作戦行動に日本が協力し、これを支援することを定めた戦争法案であり、憲法九条をじゅうりんし、安保条約の枠を超える重大な法案であります。
145衆議院本会議14号平成11年03月12日佐々木陸海共産党憲法をじゅうりんし、安保条約の枠を破り、米軍の不法な戦争に加担する戦争法案は廃案にするしかないことを強調し、質問を終わります。
145参議院本会議9号平成11年03月17日笠井亮共産党予算委員会での論戦を通じて、ガイドライン関連法案が、アメリカの戦争に日本が参加するための戦争法案であることが浮き彫りとなりました。
145参議院本会議9号平成11年03月17日笠井亮共産党この姿勢は、憲法九条を根本から否定する戦争法案の方向と軌を一にし、憲法の平和原則に真っ向から挑戦するものです。
145参議院予算委員会16号平成11年03月17日小池晃共産党さらに、予算委員会の論戦では、ガイドライン関連法案が、アメリカの不法な先制攻撃に日本を参戦させる戦争法案であり、憲法九条を根本から否定するものであることも明らかになりました。
145衆議院日米防衛協力のための指針に関する特別委員会3号平成11年03月26日小渕恵三自民党従来の共産党の御意見をずっと聞いておりますと、これが戦争法案というような感じがいたしておりまして、むしろ平和確保法案というのがこの法案であることを、はっきり国民の前に申し上げたいと思います。
145衆議院本会議26号平成11年04月27日金子満広共産党言うまでもなく、この法案の本質は、海外でアメリカが引き起こす戦争に日本が自動的に参加するという、まさに戦争法案そのものであります。
145参議院議院運営委員会17号平成11年04月28日吉川春子共産党我が党は、このガイドライン法案は、日本がアメリカの軍事行動に自動的に参加する憲法違反の戦争法案であり、自治体だけでなく民間をも含め、国民全体の命運にかかわる今国会の最重要法案であると考えます。
145参議院本会議17号平成11年04月28日小泉親司共産党ガイドライン関連法案が憲法違反の戦争法案であることが明らかになり、多くの国民から怒りと懸念の声が全国各地で上がっています。
145参議院日米防衛協力のための指針に関する特別委員会3号平成11年05月10日小渕恵三自民党結論から言いますと、このガイドライン法案、御党からいえば戦争法案ということであると思いますが、我々としては、平和を確保し、そして我が国の平和と安全を守る法案であると、ぜひ国民の皆さんにも御理解いただきたいと思います。
145参議院日米防衛協力のための指針に関する特別委員会4号平成11年05月11日依田智治自民党一方、戦争へ戦争への法律、戦争法案、アメリカの戦争に加担する法案とか、自治体や国民を戦争に動員する極めて危険な法案だ、こういう二つの見方があるわけでございます。
145参議院日米防衛協力のための指針に関する特別委員会5号平成11年05月12日小泉親司共産党この周辺事態法が、私たちが指摘するように本当に戦争法案であるということがますます明確であるというふうに思います。
145参議院日米防衛協力のための指針に関する特別委員会6号平成11年05月13日小泉親司共産党質問に入る前に、御承知のとおり私たち日本共産党は、今度の周辺事態法案及び日米ガイドライン関連法案は、戦争放棄それから武力の威嚇、行使を禁止した憲法九条に真っ向から反する戦争法案である、そのために廃案にすべきであるというふうに考えております。
145参議院日米防衛協力のための指針に関する特別委員会8号平成11年05月17日緒方靖夫共産党そこで委員長、事はこの問題、憲法違反の戦争法案なのか否かという重大な問題です。
145衆議院本会議31号平成11年05月18日平賀高成共産党内閣総理大臣の権限強化のもとでトップダウン政治を行うことは国民にとって極めて危険であることは、戦争法案の枠組みを見れば明白であります。
145参議院日米防衛協力のための指針に関する特別委員会公聴会1号平成11年05月18日畑野君枝共産党私たち日本共産党は、今度の周辺事態法案及び日米ガイドライン関連法案は、戦争を放棄し、そして武力の威嚇行為を禁止した憲法九条に真っ向から反する戦争法案だと考えております。
145参議院日米防衛協力のための指針に関する特別委員会11号平成11年05月24日小渕恵三自民党何度も繰り返して真意を申し上げておりますが、この法案は我が国の平和を脅かす事態の拡大を抑止し平和を確保するためのものでございまして、このため米国は、国連憲章、国際法に基づいて平和の確保のための活動を行い、これに我が国が協力するものでございまして、戦争法案という指摘は全く逆であり、不適切であり、むしろ平和確保法案と言うべきものであり、この点につきましては自自合意で成り立っておるわけでございます。
145参議院日米防衛協力のための指針に関する特別委員会11号平成11年05月24日小泉親司共産党私は、憲法違反の戦争法案、日米ガイドライン関連法案は廃案にすべきである、私たちは日本が世界に誇る憲法第九条を高く掲げて、この憲法の理念に基づいて、軍事力による問題の解決ではないアジアの平和をつくることが国民の多数の願いであるということを強く指摘、主張しておきたいというふうに思います。
145参議院日米防衛協力のための指針に関する特別委員会11号平成11年05月24日笠井亮共産党国会には今、戦争法案を廃案にせよ、慎重審議をという多くの国民の声が寄せられ、審議が進めば進むほど反対世論が高まっています。
145参議院本会議22号平成11年05月24日橋本敦共産党反対理由の第一は、このガイドライン法案が、アメリカの起こす戦争に日本が参加する紛れもない憲法違反の戦争法案であり、我が憲法のもとではそもそもその存在が許されないものだからであります。
145参議院本会議22号平成11年05月24日橋本敦共産党たとえきょう、この戦争法案が強行成立させられても、国民の闘いはそこで終わるどころか、さらに広がり進むでしょう。
153衆議院本会議3号平成13年10月02日志位和夫共産党日本共産党は、憲法違反の報復戦争法案をきっぱり中止することを強く求めるものであります
153参議院本会議3号平成13年10月03日市田忠義共産党明確な答弁を求めるとともに、憲法を踏みにじる報復戦争法案の中止を強く求めるものであります。
154参議院内閣委員会5号平成14年03月26日西銘順志郎自民党北朝鮮と我が国との関係を振り返るときに、どうしても同国は、北朝鮮は、自国の経済状況や食糧事情が深刻になると、米の支援を求めて日朝国交正常化交渉や両国間の人道問題の改善に向けた姿勢を示すわけであります。一方、我が国上空へのミサイルの発射問題に対する対抗措置、あるいは日米防衛協力のための指針、いわゆるガイドラインの関連法の制定に際しては、日朝関係は冷却や悪化の水準を超え戦争の瀬戸際に立っている、あるいは日本の戦争法案の採択は我が方に対する宣戦布告である等、これは本当に恫喝に等しいような態度を取ってきたというふうに私は思うわけでございます。
189参議院予算委員会3号平成27年02月03日福島瑞穂社民党五月に安全保障法制についての法案、私は戦争法案と言っておりますが、出てくると言われております。
189参議院憲法審査会2号平成27年03月04日福島瑞穂社民党集団的自衛権の行使を認めるという閣議決定を去年安倍内閣は行いました。また、ゴールデンウイーク明けに安全保障法制、私は戦争法案だと思いますが、今ま で違憲とされてきた集団的自衛権の行使や後方支援という名の下に一体となって戦争すること、駆け付け警護だって違憲と自民党もずっとやってきたことに関し て解釈で認める、あるいは法案を出そうということが言われております。