2019年から作品が自由に使えるようになるはずだった人たち

概要
1968年に死んだ人は、死後50年間の著作権保護期間を経て、2019年1月1日からその作品が自由に使えるようになるはずだった。しかし、2018年に著作権保護期間が死後70年までに延長されたため、自由に使えるのはかなり先となった。この延長がなければ2019年から作品が自由に使えるようになるはずだった人のリストをここに提示する。

はじめに

もともと、日本の著作権法では、基本的に著作者が死んでから50年経つまでは著作権の保護を受けることになっていた。だから、1968年に死んだ人は、2018年12月31日まで著作権が保護され、2019年1月1日から著作権がなくなるはずだった。つまり、1968年に死んだ人の作品は、2019年1月1日から自由に使うことができるはずだった。2019年から著作者本人のものから、「みんなのもの」になるはずだったのだ。

しかし、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)の締結にともなって、著作権法が改正され、著作権保護期間が死後50年から70年に延長された。このため、1968年に死んだ人の著作権保護期間は、2018年12月31日まででなく、2038年12月31日までということになってしまった [1]

法改正がなければ2019年から自由に使えたはずのものが、「みんなのもの」になるのが20年も遅らされてしまったのである。これは大きな損失である。著作権が保護されている間は、多くの作品が死蔵されてしまうからである [2] 。ごく限られた商業的に成功した人の作品だけが流通するのみで、そうでない人の作品は著作権保護の壁にはばまれて流通しないのだ。むしろ、著作権がなくなった方が、多くの人の目に触れるようになるし、少なからぬ人の役に立つだろう。

以下、分野別に2019年1月1日から作品が自由に使えるようになるはずだった人たちを紹介する。いずれも、1968年に死んだ人である。このまま法律が改正されなければ、実際に自由に使えるようになるのは2039年1月1日からである。

このリストは、無分別な著作権保護期間延長に対する私からの抗議である。このリストに載っている人の過半は、今では無名であり、なおかつその作品がほとんど流通していない人である。しかしながら、それぞれ懸命に人生を送り、さまざまな作品を生み出してきた。その成果が死蔵させられてしまっているのだということを知らせるために、この長大なリストを作ったのだ。

凡例

人物の姓名と主な肩書きの右肩に記している記号は、その人物が1968年に没した典拠を示すものである。記号の意味は以下の通りである。

小説家

木山捷平:『大陸の細道』などの小説を書いたほか、詩人としても活躍した。
木山捷平:『大陸の細道』などの小説を書いたほか、詩人としても活躍した。

詩人・歌人・俳人など

その他の文筆家、文学研究者

村岡花子:『赤毛のアン』などさまざまな児童文学を翻訳した。
村岡花子:『赤毛のアン』などさまざまな児童文学を翻訳した。

芸術家

万城目正:「リンゴの唄」などさまざまなヒット曲を作り出した。
万城目正:「リンゴの唄」などさまざまなヒット曲を作り出した。

宗教家

学者

黒田チカ:女性として初めて帝国大学に入学し、化学者として多大な業績を上げた。
黒田チカ:女性として初めて帝国大学に入学し、化学者として多大な業績を上げた。

政治家・官僚など

辻政信:参謀として無謀な指導を行い多くの人を死に至らしめた。
辻政信:参謀として無謀な指導を行い多くの人を死に至らしめた。

その他

中村久子:両手両足を失うも、自立した生活を送った。
中村久子:両手両足を失うも、自立した生活を送った。
脚注
  1. 詳しくは文化庁ウェブサイトにある「環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律(平成28年法律第108号)及び環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律の一部を改正する法律(平成30年法律第70号)について」を参照のこと。 []
  2. 死蔵について詳しく知りたい人は、「著作権保護期間の20年延長がTPP関連法案成立でほぼ確定、一方で延長は悪手だと示す膨大なデータが公開される」という記事を参照のこと。 []
  3. 埼玉県のウェブサイトに没年の記載あり。 []
  4. 山口県のウェブサイトに没年の記載あり。 []
  5. 荘内日報社のウェブサイトに没年の記載あり。 []
  6. 釧路市立美術館のウェブサイトに没年の記載あり。 []
  7. 呉市立美術館のウェブサイトに没年の記載あり。 []
  8. 東京都写真美術館のウェブサイトに没年の記載あり。 []
  9. 戸田哲也.(2011). 「考古学者の書棚「古代への情熱」シュリーマン著 村田数之亮訳/岩波書店(1954)「発掘」曽野寿彦/中央公論社(1964)」『アルカ通信』96, 4.に没年の記載あり。 []
  10. 公益財団法人糸賀一雄記念財団のウェブサイトに没年の記載あり。 []