普通
中国史における昔の元号は現代の感覚からすると珍妙に見えるものが少なくない。
中でも一番珍妙に見えるのは南北朝時代の梁(502-557)の「普通」という元号だろう。これは梁の武帝(在位:502-549)の治下で用いられた元号である。普通元年は西暦520年で、普通八年(527)まで続いた。
現代の日本語の感覚からすると「普通」というのは平凡とか一般的という意味になるが、当時はそういう意味で用いられていたわけではない。「普」は「あまねく」という意味なので、「普通」は「あまねく通じる」という意味になる。梁の武帝は仏教が好きなので、仏教的意味合いもあるのかもしれない。なお、達磨大師が中国に来たのは普通元年のことである。
珍妙に見えると言えば、梁代には侯景という武将が「宇宙大将軍」という称号を名乗っている。これも現代の日本の感覚からすると、特撮の悪役にしか聞こえない。
長寿
武周(690-705)の元号に「長寿」というものがある。「長寿元年」というと今では福祉関係のパンフレットに載っていそうである。長寿元年は692年であり、長寿三年(694)まで続いた。長寿という名前がついているわりに、短命の元号である。
開運
後晋(936-947)の元号には「開運」というものがある。現在ならあやしいパワーストーンの広告に「開運元年」とか出ていそうだ。
「開運」は出帝(在位:942-947)の元号である。開運元年は944年であり、後晋が滅んだ開運四年(947)まで続いた。国が滅んでしまうなんて、まったく運が開いていない元号だ。